NBA.com/Japan ウィークリーコラム
ケガの克服が、ロケッツ上昇のカギ
By Masasyoshi Niwa

無駄話をしているから、肝心なことを聞けなくなる。

 
 
ロケッツのディフェンス面で大きく貢献しているバティエー。世界選手権の時も、アメリカ代表として素晴らしいディフェンスを披露した。
Bill Baptist/NBAE/Getty Images
9日、シアトル。

試合が終わってから、勝利で賑わうロケッツのロッカールームへ。すぐさま、トレイシー・マクグレディが取材に応じると、メディアが殺到した。

ただ、ちょうどそのとき、シェーン・バティエーがシャワーから出てくるのが見えたので、彼のところに向かう。昨年来、日本での世界選手権も含めて彼は、いいコメントの供給者である。

元気そうだね? と声を掛ければ、「久しぶりだな」と応じてくれる。

この日、0点だった選手に「元気そうだね」もないが、ラシャード・ルイスとマッチップして、相手のエースを抑え込む。ルイスが得意とする3ポイントは、9本中1本しか決まらなかった。試合終盤、ルイスの3ポイントが決まれば−−、という場面が度々あったが、ルイスのリズムは、バティエーのディフェンスによって崩されていた。

そのプレイスタイルは、いかにもバティエーらしいものだが、唐突に「松坂(大輔)は凄いな」と、話を振られて、ボタンを掛け違った。

5日のデビュー戦を、テレビで観戦したという。

「レッドソックスが好きだから」

明後日(11日)は、イチローと対戦するんだろ? とまで言う。そこまで行けばマニアだが、

「野球が大好きでね、子供ころは、タイガースファンだったんだ」

さて−−。ここで適当に流し、野球の話は止めるべきだった。が、「イチローはフリーエージェントになるんだろう?」と、話を変えたのも、バティエー。

無視も出来ず、その話題に夢中になっている間に、マクグレディの取材を終えた記者らがバティエーのところに集まり始め、1対1が難しくなった。仕方がなくその場を譲り、彼らがいなくなったら、また話を聞こうと思ったのだが、今度は、別の邪魔が入った。

ジュワン・ハワードの子供らがロッカーにいて、イースターの卵を選手らに分けている。中にはステッカーが入っているだけだったが、バティエーは、「何だ、キャンディーは入ってないのか」と相手をするから、子供たちものってくる。

彼の横に座って、子供たちがいなくなるのを待ったが、ハワードがシャワーを浴びていたこともあり、いつまでも、いつまでも、バティエーはベビーシッターをすることになった。

ここまで来ると、もう、時間だけが過ぎていく。多くの選手は、すでに着替えを終えて、バスの中。少し前、ヤオ・ミンもまた、中国メディアとのインタビューをおえて、ロッカーを出て行った。

ロケッツのチームの雰囲気を、色々と取材したかったのだが、やがて自分がロッカーに残った最後の記者となると、広報の目が集中する。

「出て行ってくれ」とまでは言わないが、いづらい…。それなのに、相変わらずハワードの子供はバティエーに話しかけていて、彼もまた、丁寧に相手をしていた。

結局、野球のことは5分以上も話したのに、バスケットの話はゼロ。最後に、「子供は?」と聞けば、「まだいない。でも、欲しいんだけどね」というやり取りになって、あきらめた。あの雰囲気では、まじめにプレイオフのことを聞いても、しらけてしまう。

要するに、誰もいない時に、まず、必要な話をすべきだった。

まあ、取材なんて、得てしてこんなものだけど−−。

 
T-Macとヤオの両エースが健康でいる事はもちろんであるが、プレイオフを勝ち抜くには、他のサポートも必要となってくる。
Jesse D. Garrabrant/NBAE/Getty Images
 
ところで、試合を見て思ったのは、彼らがプレイオフで勝ち上がる厳しさだ。ダークホースになるのでは?という期待を感じていたが、セミファイナルであたるであろうマーベリックスに勝つのは非常に難しいと思う。

ロケッツのディフェンスは、さすが。この日も、ソニックスのFG%を39.8%に抑えている。彼らが得意とする3ポイントシュートも16.7%に抑えた。8日現在、失点ではリーグ2位、相手FG%の低さではリーグ1位だが、その片鱗をまざまざと見せつけている。

そのあたりは、移籍してきたバティエーの貢献も大きいが、対照的にオフェンスは、マクグレディとヤオ1本調子になりがち。この日は、ヤオが31点、マクグレディが27点を挙げたが、数字ほどの動きでは無い。ソニックスのディフェンスに助けられたと書いた方が、適切だろう。

6日は、二人が揃って欠場。すると、勝たなくてはいけないブレイザーズ戦を落とした。これで、彼らが揃って欠場した時の勝敗は、0勝3敗(2006-07シーズン)。通算でも、1勝11敗となっている。

逆に、二人が揃ってプレーし場合、今季の勝敗は26勝11敗だが、マクグレディの背中痛は、もはや慢性的なもの。プレイオフに向けて、劇的に回復するめどは立っていない。

また、左ひざのケガの影響で、後半になってようやく復帰したヤオも、背中に痛みを抱えている。左ひざの状態も完全ではなく、復帰してからの出場時間は30分前後に抑えられたまま。この日の試合中も、トランジッションが続くと、膝に手をついて呼吸を整えていた。

ロケッツがプレイオフでアップセットを起こすには、二人の状態がベストであることが必要条件だが、プレイオフをおよそ10日後に控えての状態が、この有り様では、1回戦であたるであろうジャズ戦とて、苦戦を強いられるかもしれない。

オフェンスに、もう一人ヘルプが欲しい。開幕前は、新しく加入したボンジ・ウェルズに期待が集まったが、9日の試合会場に現れず、翌日、チームから事実上の解雇を言い渡された。

バティエーをトレードで獲得して、この日、チームは今季49勝目を挙げたものの、内情は対戦相手よりも、ケガとの闘い。プレイオフが始まるまでに、マクグレディ、ヤオらの状態は、回復するのかどうか。この時期になれば、どのチームも抱える懸念だが、チームを支える二人が揃って不安と闘っているという事実が、ロケッツにとっては致命的になりかねない…。

さて、バティエーとは、ロッカーからバスに乗り込むまでの間に、再度インタビューを試みた。しかし、ロッカーのドアを開けた瞬間、関係者の子供らが待ち構えていて、彼にサインをねだった。
さすがにあきらめて立ち止まると、彼はウインクをする。
「ゴメンな」の意思表示だった。